http://www.atmarkit.co.jp/flinux/rensai/bind905/bind905b.html
「ゾーンデータの更新検知→ゾーンデータの複製→ゾーンデータの再読み込み」が実施できるのはゾーン転送だけではありません。皆さんもよくご存じのrsyncやrdistなどのリモートファイル同期ツールを利用することも可能なのです。
「ゾーン転送で十分ではないか」と思われる方も多いと思いますが、BINDを運用している方の中には、たびたび報告されるゾーン転送の脆弱性に嫌気が差し、ゾーン転送を無効化してこれらのツールを利用する方もいます。rsyncやrdistは差分アップデートを備えており、効率のいい転送が行えます。さらにsshを利用することで、よりセキュアに操作できます。
ゾーン転送を切り捨てた時点で、スレーブ・サーバをslaveで立ち上げることは無意味になります。マスター・サーバと同様に、スレーブ・サーバをmasterとして立ち上げます。
zone "example.jp" { type master; file "example.zone"; };
named.confの一部。スレーブ・サーバのnamed.confを元に戻す
マスター・サーバからスレーブ・サーバに対して、rsyncでファイルコピーを行うには次のようにします。
$ rsync -azb -e ssh /var/named/example.zone ユーザー名@スレーブ・サーバIP:/var/named/example.zone.bak
-a | アーカイブモード |
-b | バックアップファイルを「~」の付いた名前で作成 |
-u | より新しければ更新しな |
-v | 実行過程を詳細表示 |
-z | zlibを利用して圧縮転送を行う |
-e | ssh バージョン1を利用する場合は「ssh1」を指定 |
ユーザー名には、スレーブ・サーバの/var/named/に書き込み権限を持つユーザーを指定します。逆に、スレーブからマスターのファイルをダウンロードする際は、引数の順序を逆にします。
$ rsync -auzb -e ssh ユーザー名@マスター・サーバIP:/var/named/example.zone /var/named/example.zone.bak
上記のコマンドラインを、/var/named/に書き込み権限を持つユーザーで実行します。お互いのサーバでsshが使え、rsyncがコマンドパスに入っているかどうかに注意してください。
コピーが完了したらrndcを使い、ゾーンデータの再読み込みを行います。スレーブ(注)側で再読み込みを行わせるのは、通常どおり
# /usr/local/sbin/rndc reload
を実行します。
注:「マスター」と「スレーブ」を区別するのは、どちらのデータがよりオリジナルかという点に帰結します。
マスターからスレーブのrndcをリモート実行するには次のようにします。
$ ssh ユーザー名@スレーブ・サーバIP '/usr/local/sbin/rndc reload'
注:ファイルパスは環境に応じて適宜書き換えてください。ユーザー名は、スレーブにおいてsshが実行でき、rndcの実行権を持つユーザーである必要があります。
なお、reloadではゾーンファイルのタイムスタンプが重要になります。マスターとスレーブで時刻の設定にズレがないように、ntpdateなどで内部時計を合わせておきましょう。
# ntpdate time.nist.gov
ここまでの操作を自動化させるには、sshのパスワード入力をssh-agentなどで省略したうえでスクリプトにまとめ、crontabで周期的に実行させる必要があり、単純な作業ではありません。ただし、ゾーンファイルの更新が頻繁でないのであれば、ここで紹介した手動によるアップデートの方が実用的です。
rdistでも同様のことが行えます。また、scpを応用する方法も考えられますが、rsyncが使える環境ならrsyncを使用することをお勧めします。